私が漢方っておもしろいと思った事のひとつに、不眠の考え方があります。
西洋医学では作用時間の違いはあるものの、睡眠導入剤を服用します。しかし、この睡眠導入剤には、依存性の問題がありますし、もし、服用後トイレなどで起きることになった場合、ふらつきや転倒を引き起こす恐れがあります。漢方薬はそのような心配はありませんが、服用しなくても眠れるのなら、それに越した事はありません。睡眠導入剤で眠りがうまくコントロールできている方も、服用する量を減らすため、最初は漢方薬との併用で、その後は漢方単独で、そして徐々に漢方薬の量を減らしていけたら良いですね。漢方の考えではまず不眠の原因を考えます。

• 1.その日あった出来事でイライラし、気分が落ち着かない
• 2.楽しい事うれしい事を思い出したり、昼間頭を使いすぎたりして目がらんらんとして興奮している
• 3.落ち込むことがあり、くよくよ考えこんでしまう
• 4.不安感が強く、恐怖感、強迫観念につきまとわれている
• 5.手足がほてり、物音や些細な事で驚き動悸がする
• 6.体がぞくぞくと寒気がする

などなど、その時その時によって眠れない原因は違います。高ぶる気持ちを落ち着かせ、沈んだ気持ちをちょうどよい状態に近づけながら、それぞれの原因を緩和する多くの種類の漢方薬があります。
なんとなく調子が悪いとか、検査の結果の後に「気のせい」とかいわれてしまった方に東洋医学はおすすめです。漢方では、「気のせい」の「気」の病にあった薬も多くあります。

私は、漢方薬はクラシック音楽のようだと思うのです。

例えば、漢方薬の代表と言ってもよい葛根湯。葛根湯は３世紀初めの後漢の時代に張仲景が著したと伝えられる【傷寒論】に記載があります。
記載といっても、当時、紙に記す文化はまだなかったため、木か何かに記され、のちの時代の人が紙に記したようです。

張仲景さんの一族はもともと２００人余りいましたが、急性熱性病で１００人以上なくなりました。
その伝染病を治す処方について書かれたのが【傷寒論】です。

後漢といえば、日本では弥生時代です。そんな時代の薬が今、令和の時代にも使われているのなんて驚きですよね。

そしてクラシック。私はショパンが好きです。
ショパンの『革命のエチュード』は、１８３１年ロシア軍がショパンの故郷であるワルシャワを占拠した時の彼の憤慨を表現した曲といわれています。
今の時代に作られた、素敵な音楽が世の中にはたくさんありますが、クラッシク音楽に魅了される方もたくさんいらっしゃいます。

何が言いたいかといいますと、時代を超えて、すばらしいものはずっと生き残るということです。

漢方薬は後漢の時代からはじまり、江戸時代までにつくられた処方です。
当時は今よりももっと多くの処方があったでしょうが、あまり効果が良くなかった処方は淘汰されたのでしょう。
ですので、今も残る漢方薬は真のスーパースターなのです。

そんなスター処方を使わないのはもったいないと思います。

「これは！」という体験談を一つご紹介します。

私の家族の話です。
花粉症のため花粉の飛ぶ時期には毎年耳鼻科で処方される、眠たくなりにくいといわれるけど、実際はやっぱり眠たくなる抗アレルギー剤を飲んでいました。

ある年、生理不順の改善を目的にある漢方薬を秋頃に飲み始めました。

すると翌年の春、「今年って、花粉の飛ぶ量少ないかな？」と私の子供が訊ねるのです。
いやいやそんなことはありません。私の鼻センサーは反応しております。例年通りの飛散量でありました。

「いつもと何か違う対策ってしたかなあ」と思っていた時、『その漢方薬には花粉症の予防効果がある』と書かれた本を見つけたのです。

「なるほど！」でした。
もちろん、その人その人の体質により、効果の良し悪しはありますが、試してみる価値はありそうです。
本来の目的の生理不順も改善されました。

・生理前のなんとなく調子が悪い、いわゆる月経前症候群
・つわりを楽にする目的や、安胎、産後の体力低下
・子育てや介護でのなんとなくの不安感やイライラ感
・更年期のほてりやホットフラッシュ

など、女性によくある悩みに漢方薬がこたえてくれます。